介護しやすい部屋づくりで時間と労力を節約するヒント
自宅の介護環境整備でダブルケアの時間と労力を生み出す
親御さんの介護が長くなり、同時に大学に通うお子さんのことも気にかけなければならないダブルケアの日々は、時間的にも体力的にも大きな負担を伴います。特に、自宅での介護は移動や介助、見守りなど、細かな対応が必要となり、気づけば多くの時間を費やしているという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、自宅の介護環境を少し整えることで、日々の介護にかかる時間や労力をぐっと減らし、結果としてダブルケア全体を効率化できる可能性があります。物理的な環境を整備することは、介護する側の負担を減らすだけでなく、介護される側の方の安全性を高め、自立を促すことにもつながります。
この記事では、ダブルケアで忙しい日々の中でも実践しやすい、自宅の介護環境整備による時短・効率化のヒントをご紹介します。
時間と労力を節約する自宅環境整備のポイント
自宅の環境整備と聞くと大掛かりなリフォームを想像されるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。配置換えやちょっとしたアイテムの導入など、今日からでも始められる工夫もたくさんあります。
1. 移動の効率化と安全確保
家の中での移動は、介護する側にとってもされる側にとっても負担が大きいものです。通路や動線を見直すことで、介助の労力を減らし、移動にかかる時間を短縮できます。
- 通路の確保: 廊下や部屋の通路に物を置かず、十分な幅を確保します。介助者が寄り添ったり、車椅子が通ったりできるスペース(目安として80cm以上)があると安心です。
- 段差の解消: 部屋と廊下の境、玄関、浴室の入口などの小さな段差でも、つまずきや転倒の原因になります。スロープを設置したり、段差手前で声をかける習慣をつけたりするだけでも変わります。介護保険の住宅改修で段差解消工事を行うことも可能です。
- 手すりの設置: 廊下、階段、浴室、トイレなどに手すりを設置すると、ご本人が自分で移動できる範囲が広がり、介助の頻度や労力を減らせます。これも住宅改修の対象となる場合があります。
- 家具の配置換え: よく移動する場所(リビングからトイレ、寝室からリビングなど)の動線を短く、スムーズにするために家具の配置を見直します。
2. 介助スペースの確保と工夫
食事、排泄、入浴、着替えなど、介助が必要な場所の環境を整えることも重要です。
- ベッド周り: 介助しやすいようにベッドと壁の間隔を空けたり、ポータブルトイレやナースコール(呼び出しベル)を手の届く範囲に置いたりします。介護用ベッドの利用も検討できます。
- 浴室・トイレ: 滑りにくいマットを敷く、手すりを設置する、シャワーチェアやバスボードを使うなど、安全かつ介助しやすい環境にします。ポータブルトイレは、夜間のトイレ移動の負担を減らし、睡眠時間を確保するのに役立ちます。
- 介助に必要な物の定位置: 介助に必要なオムツ、清拭用品、着替えなどを、介助する場所の近くにまとめて収納しておくと、探す手間が省けてスムーズに対応できます。
3. 日常生活動作のサポート
環境整備によって、ご本人が自分でできることを増やすことは、介助者の時間と労力の大幅な削減につながります。
- 食事関連: 滑り止め付きの食器、握りやすいスプーンやフォーク、高さを調整できるテーブルなどを活用すると、ご本人が自分で食べやすくなります。
- 着替え関連: 引き出しやタンスの配置を見直したり、着替えやすい衣類を選んだりすることもサポートになります。
- 見守り: 常に付きっきりで見守るのが難しい場合、簡易的な見守りカメラや離床センサーマットなどを活用することで、物理的な負担を減らしながら必要なタイミングで対応できます。
4. 収納の工夫で「探す時間」をなくす
薬、介護用品、書類など、介護に関連する物は多岐にわたります。これらを整理整頓し、必要な時にすぐ取り出せるようにすることで、「どこに置いたっけ?」と探す無駄な時間をなくすことができます。
- 定位置管理: 種類ごとに分けて収納場所を決め、使ったら必ず元の場所に戻すルールを作ります。
- 見える収納: ラベルを貼ったり、透明なケースを利用したりして、中身が一目でわかるようにします。
- よく使うものは手の届く範囲に: 薬や体温計など、頻繁に使うものは取り出しやすい場所に置きます。
環境整備を進める上での注意点と専門家の活用
環境整備は、介護されるご本人の状態や、介護する側の生活スタイルによって、最適な方法が異なります。
- ご本人や家族と相談: どのような環境が過ごしやすいか、どこに負担を感じているかなどを、ご本人や他のご家族と話し合いながら進めることが大切です。
- 専門家への相談: ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談することで、ご本人の状態に合った具体的なアドバイスや、利用できる介護保険サービス(住宅改修、福祉用具レンタル・購入)の情報を得られます。福祉用具専門相談員は、自宅の環境に合った福祉用具選びをサポートしてくれます。
- 無理のない範囲で: 一度にすべてを変えようとせず、優先順位をつけ、できることから少しずつ進めていくのが良いでしょう。
まとめ
ダブルケアで忙しい日々の中で、自宅の介護環境を見直すことは、時間と労力の節約に直結する有効な手段です。通路の確保、介助スペースの工夫、日常生活動作のサポート、収納の整理整頓など、具体的なアイデアを一つでも実践することで、日々の介護の負担を軽減し、より効率的に時間を使えるようになります。
また、環境整備は介護する側だけでなく、介護される側の安全や自立にもつながるため、ご本人のQOL(生活の質)向上にも貢献します。完璧を目指すのではなく、できる範囲で少しずつ環境を整え、必要に応じて専門家の知恵やサービスを活用してみてください。環境を整えることが、ダブルケアの負担を少しでも軽くするための助けとなることを願っています。