親の急変、災害... ダブルケアの緊急時対応を効率化する備え
ダブルケア中の「もしも」に備える重要性
介護と子育てを同時に行うダブルケアでは、日々のタスクをこなすだけでも手一杯になりがちです。しかし、親の体調急変や予期せぬ災害といった緊急事態は突然起こり得ます。こうした「もしも」の時、事前の準備が不十分だと、対応に追われて大きな時間的・精神的負担がかかり、混乱を招く可能性があります。
限られた時間の中で冷静に対応し、被害や混乱を最小限に抑えるためには、日頃からの備えが非常に重要になります。適切な準備をしておくことで、いざという時も必要な行動を迅速に、そして効率的に行うことが可能になり、結果的に時間と労力を節約することにつながります。
この記事では、ダブルケアをされている方が、緊急時に慌てず対応するための具体的な備えや、対応時間を効率化するヒントをご紹介します。
必要な情報の整理と共有を徹底する
緊急時に最も必要となるのは、正確で最新の情報です。親に関する医療情報、連絡先、契約サービスなどの情報を一元管理し、家族間で共有できる体制を整えておくことが、対応の第一歩となります。
1. 親の医療・介護情報のリスト化
親の病歴、現在服用している薬、かかりつけ医（連絡先、診察時間）、アレルギー情報、介護保険サービスの利用状況（ケアマネジャーの連絡先含む）などをリスト化します。可能であれば、健康保険証や介護保険証、お薬手帳のコピーも保管しておくと安心です。
2. 緊急連絡先の明確化
親族、近隣住民、友人、勤務先、ケアマネジャー、利用しているサービス事業所、かかりつけ医、地域の救急相談窓口など、緊急時に連絡すべき先とその連絡先リストを作成します。誰が、どのような状況で、誰に連絡するかといった役割分担も事前に話し合っておくと良いでしょう。
3. 情報の共有方法の検討
作成したリストや情報は、ダブルケアに関わる家族間で常に共有されている状態が理想です。共有方法としては、以下のようなものが考えられます。
- 共有フォルダ: クラウドストレージ（Google Drive, Dropboxなど）に情報を保管し、関係者で共有します。
- 情報共有アプリ: 家族間やケア関係者との情報共有に特化したアプリを利用します。
- 手帳やノート: 紙媒体でも構いません。常に最新の情報に更新し、保管場所を決めておきます。
情報を一箇所にまとめ、関係者がいつでもアクセスできるようにしておくことで、緊急時に必要な情報を探す手間が省け、迅速な対応が可能になります。
緊急時の連絡体制と役割分担を定める
緊急事態発生時、誰が最初に状況を把握し、誰に連絡するかの体制が明確でないと、連絡漏れや二重連絡、対応の遅れが生じる可能性があります。
1. 初期対応者の決定
親の近くにいることが多い人や、最初に連絡を受ける可能性が高い人を、初期対応者として定めます。初期対応者は、状況を落ち着いて把握し、次のステップに移る役割を担います。
2. 連絡網の作成と確認
緊急連絡先リストに基づき、誰が誰に連絡するかという連絡網を作成します。例えば、「親の急変時は、まず〇〇さん（配偶者や兄弟）に連絡し、次に△△さん（ケアマネジャー）に連絡する」のように具体的に定めます。
3. 家族間の役割分担
緊急時の対応（救急車の手配、医療機関への連絡、他の家族への連絡、勤務先への連絡、子どもの状況確認など）について、事前に家族間で役割を分担しておきます。これにより、混乱を防ぎ、各自がスムーズに行動できるようになります。
物理的な備えと避難計画を立てる
地震や台風などの災害は、介護を必要とする高齢者にとって特に大きな脅威となります。スムーズな避難や自宅での安全確保のため、物理的な備えも重要です。
1. 災害用持ち出し袋の準備
一般的に推奨される防災グッズに加え、親に必要な介護用品（オムツ、清拭用品、トロミ剤、常用薬など）や、医療情報、連絡先リストのコピーなどを加えた、災害時用の持ち出し袋を準備します。親の状況に合わせて、リュック型にするか、キャリーケースにするかなども検討します。
2. 自宅での備蓄
数日分の食料、水、薬、介護用品、非常用電源（スマートフォンの充電などに必要）などを備蓄します。ローリングストック方式（古いものから使い、使った分を買い足す）で、常に一定量を確保できるよう管理します。
3. 避難場所と避難経路の確認
地域の指定避難場所を確認します。親の移動能力や体調を考慮し、現実的な避難経路を検討します。必要に応じて、福祉避難所の情報も確認しておきます。
4. 安否確認方法の取り決め
災害発生時、家族間で安否確認を行う方法（集合場所、連絡手段、使用するアプリなど）を決めておきます。電話回線が混雑する場合に備え、災害用伝言ダイヤルやSNSの活用方法も確認しておくと良いでしょう。
シミュレーションと定期的な見直し
事前の備えは、一度行えば終わりではありません。準備した情報、連絡体制、物理的な備えが有効であるか、定期的に見直し、家族でシミュレーションを行うことが大切です。
例えば、年に一度は持ち出し袋の中身を確認し、食料や薬の使用期限をチェックします。連絡先リストに変更がないか確認し、家族間で連絡網をたどる練習をしてみることも有効です。
また、親の状況が変化した場合は、その都度、備えの内容を見直す必要があります。介護度が上がった、新たな病気が見つかった、引っ越しをしたなど、変化に応じて情報や計画を更新します。
まとめ：備えが安心と時間のゆとりを生む
ダブルケアにおける緊急事態への備えは、時間がない中で後回しになりがちなことかもしれません。しかし、ここでご紹介したような情報の整理、連絡体制の構築、物理的な準備は、いざという時に慌てず、冷静に、そして効率的に対応するための土台となります。
事前の準備に少し時間をかけることで、緊急時にかかる無駄な時間や労力を大きく削減し、家族の安心にもつながります。この記事が、皆様のダブルケアにおける「もしも」の備えの一助となれば幸いです。