ダブルケアを助ける介護記録のシンプル化アイデア
介護記録の負担を減らし、時間を生み出すためのシンプル化アイデア
ダブルケアをされている方にとって、時間は常に限られた貴重な資源です。親御さんの日々のケア、食事、通院、そしてお子さんのこと、ご自身の仕事や家事。やらなければならないことに追われる中で、「介護記録をつける」というタスクが、さらに負担に感じられることもあるかもしれません。
しかし、介護記録は親御さんの健康状態の変化に気づいたり、介護サービス提供者やご家族との正確な情報共有を行ったりするために、非常に重要な役割を果たします。完全に省略することは難しいとしても、その負担を減らし、効率化することは十分に可能です。
この記事では、ダブルケアの時間を有効に使うために、介護記録の負担を減らし、シンプルに続けるための具体的なアイデアをご紹介します。
なぜ介護記録は重要なのか
介護記録は、単に日々の出来事を書き残すだけでなく、様々なメリットがあります。
- 変化の早期発見: 日々の記録をつけることで、体調や様子の小さな変化に気づきやすくなります。これは病気の早期発見や悪化を防ぐ上で非常に役立ちます。
- 正確な情報共有: 医師、看護師、ケアマネジャー、ヘルパーさんなど、関わる専門職に正確な情報を伝えることができます。「いつから」「どのような」変化があったかを具体的に伝えられるため、適切な判断や対応につながります。
- 家族間の連携: 複数人で介護を分担している場合、記録を共有することで、それぞれの状況を把握し、スムーズな連携が可能になります。
- 介護計画の見直し: ケアプランが現在の状況に合っているかを見直す際の参考資料となります。
これらのメリットがある一方で、毎日きちんと記録を続けることは、忙しいダブルケアの中では大きな負担になりがちです。次のセクションでは、この負担を軽減するための具体的な方法を見ていきましょう。
記録をシンプルにする考え方:完璧を目指さない
介護記録の負担を減らす第一歩は、「完璧な記録を目指さない」という意識を持つことです。すべてを詳細に記録しようとすると、それ自体が目的になってしまい、疲れてしまいます。記録の目的は、あくまで「必要な情報を効率的に共有し、ケアに役立てる」ことです。
- 記録の目的を明確にする: 誰と情報を共有するためか、どのような情報を把握しておきたいのか、目的を絞ることで記録すべき項目が見えてきます。
- 最低限必要な項目を決める: 毎日必ず記録する項目(例:食事量、排泄、体温、機嫌など)と、何か変化があったときにだけ記録する項目(例:気になる症状、受診情報、サービス利用状況など)を分けます。
具体的なシンプル化・効率化アイデア
1. 記録フォーマットを決める(テンプレート化)
記録する項目や形式があらかじめ決まっていると、何を書こうか迷う時間を省けます。
- ノートにテンプレートを自作: 介護ノートや大学ノートなどに、日々の記録に必要な項目(日付、時間、食事、排泄、体温、服薬、その他特記事項など)を書き出す欄を事前に印刷または手書きしておきます。
- PCやスマートフォンでテンプレートを作成: スプレッドシート(Excel, Google スプレッドシートなど)や文書作成ソフト(Word, Google ドキュメントなど)でテンプレートを作成し、日ごとにコピーして使用します。
2. 使うツールを見直す
記録方法を工夫することで、手間を減らすことができます。
- 手書きノート: 手軽に書き込めるのがメリット。一冊にまとめることで、過去の記録も見返しやすくなります。
- 共有可能なメモアプリ: LINE Keep、Google Keep、Evernote、OneNoteなど。スマートフォンからいつでも記録でき、家族間でのリアルタイム共有が容易です。写真や音声なども添付できます。
- 介護記録専用アプリ: 介護に特化した機能(バイタル記録、服薬管理、ケア内容入力など)を持つアプリもあります。データ分析機能があるものも。
どのツールが使いやすいかは状況によりますが、ご自身や共有するご家族が使い慣れているツールを選ぶのがおすすめです。
3. 記録する項目を絞る
「完璧を目指さない」考え方に基づき、記録する項目を必要最低限に絞り込みます。
- 毎日記録するのは、「食事量(完食、〇割など)」「排泄(あり/なし、状態)」「体温」「簡単な様子や気分」程度に限定します。
- 何か普段と違うことがあった場合(例:咳が出ている、食欲がない、いつもより元気がない、転倒したなど)や、重要なケアを行った場合(例:入浴介助、受診付き添いなど)に、詳細を追記するようにします。
4. 記録するタイミングと場所の工夫
「後でまとめて書こう」と思うと、忘れてしまったり、記録自体が億劫になったりします。
- 「ながら記録」の実践: 食事介助の直後、排泄介助の後など、ケアを行ったその場で簡単にメモをする習慣をつけます。
- 記録ツールの配置: 親御さんの部屋やリビングなど、ケアを行うことが多い場所に記録用のノートやスマートフォンを置いておきます。
5. 音声入力や写真・動画の活用
文字入力の手間を省いたり、状況を正確に伝えたりするために役立ちます。
- 音声入力: スマートフォンの音声入力機能を活用し、話すだけでテキストに変換します。手が離せない時や移動中でも記録できます。
- 写真・動画: 傷の様子、食事の内容や量、湿布を貼った場所、内服薬の種類などを写真に撮って記録や共有に使います。言葉で説明するより正確で、時間もかかりません。ケアの方法(着替えの順序など)を動画で撮っておき、家族やヘルパーさんと共有するのも有効です。
6. 家族間での分担・共有方法
複数のご家族で介護に関わっている場合、記録の役割分担や共有方法を決めておくと効率的です。
- 共有ツールの活用: 共有メモアプリやクラウド上のスプレッドシートなどを使い、誰でもいつでも最新の記録を確認・入力できるようにします。
- 「〇曜日は〇さんが記録担当」のように役割を決める: 特定の人がまとめて記録するのではなく、可能な範囲で分担することで、一人の負担を減らします。
7. 関係者への情報共有を効率化する方法
ケアマネジャーや訪問看護師など、専門職への情報共有も、日々の記録を効率化することでスムーズになります。
- 記録をまとめる: 面談や訪問時に、記録をまとめたもの(コピーや印刷、データなど)を提示します。口頭説明だけよりも、状況が正確に伝わり、限られた時間での情報共有が効率的に行えます。
- 共有ツールの活用: 専門職も閲覧できる共有ツール(許可されている場合)を利用することで、リアルタイムな情報共有が可能になります。
まとめ
ダブルケアにおける介護記録は、親御さんのケアの質を高め、関わる人たちの連携をスムーズにするために重要です。しかし、その負担は決して小さくありません。
この記事でご紹介したように、「完璧を目指さない」という意識を持ち、記録する項目を絞る、使いやすいツールを選ぶ、音声入力や写真・動画を活用するなど、いくつかのアイデアを組み合わせることで、記録の手間を大幅に減らすことができます。
ご自身の状況に合わせて、実践できそうなアイデアから一つずつ試してみてください。介護記録の負担を減らすことは、限られた時間の中で、ご自身が心身ともに少しでも楽になり、ダブルケア全体を効率的に回すことにつながるはずです。